歯科の医療法人はいつから対象か:要領を版ごとに比べました
インターネット上の解説は書かれた時期によって結論が違います。「医療法人は使えない」と書かれた記事も、当時は正しかったのです。公式に公開されている一般型の公募要領を第2回から第9回まで取得し、「歯科」の語と医療法人の書き方を比べました。第1回の要領は同じ場所では開けませんでした。
| 公募回 | 公募開始 | 「歯科」の語 | 医療法人の書き方 | 診療報酬と保険診療のFAQ |
|---|---|---|---|---|
| 第2回 | 2025年4月15日 | なし | 医療法人は対象外 | - |
| 第3回 | 2025年6月27日 | なし | 医療法人は対象外 | - |
| 第4回 | 2025年9月19日 | なし | 医療法人は対象外 | - |
| 第5回 | 2025年12月19日 | なし | 医療法人は対象外 | Q64 保険診療に対する補助は対象外 |
| 第6回 | 2026年3月13日 | なし | 医療法人は対象外 | Q65 重複に該当しない |
| 第7回 | 2026年6月5日 | あり | 医療法人(キで定めるものを除く。) | Q65 重複に該当しない |
| 第8回 | 2026年8月18日 | あり | 同上 | 同上 |
| 第9回 | 2026年11月4日 | あり | 同上 | 同上 |
当サイトが2026年11月5日に各回の公募要領のPDF(application_guidelines_ippan_02〜09)とFAQ(第5回〜第9回)を取得して比べました。公募開始日は公式のスケジュールのとおりです。
「キ【歯科医業を営む医療法人】以下の要件を全て満たす歯科医業を営む医療法人・医療法第44条に規定する都道府県知事の認可を受け設立されている法人であること。・従業員数が 300 人以下であること。」第9回 公募要領 PDF p.16
「医療法人(キで定めるものを除く。)及び法人格のない任意団体は補助対象となりません。」第9回 公募要領 PDF p.15
つまり対象に加わったのは「歯科医業を営む医療法人」だけです。医科の医療法人は「キ」に入らないので対象外のままです。同じ医療法人の中で、歯科と医科で結論が分かれています。
保険診療の答えは第5回と第6回で逆になりました
歯科医院にとって「医療法人かどうか」と同じくらい大事なのが、保険診療との関係です。同じ質問に対する公式のFAQの答えが、公募回で反転しています。
| 公募回 | FAQ | 答え |
|---|---|---|
| 第5回 | Q64 | 保険診療(診療報酬・介護報酬を受ける事業)に対して補助することは二重支給になるので対象外。自由診療は対象 |
| 第6〜9回 | Q65 | 診療報酬・介護報酬は重複に該当しないので申請可能 |
「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬につきましては、重複に該当しないため、申請いただく事は可能です。」FAQ Q65(第6〜9回)FAQ PDF p.5
「固定価格買取制度等(公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は除く)や、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)の補助金と補助対象経費が重複する事業は補助対象となりません。」第9回 公募要領 PDF p.13
| 公募回 | FAQ「医療・クリニックは補助対象となりますか」の答え(要約) |
|---|---|
| 第5回 Q71 | 医療法人は対象外。診療報酬との重複がある事業は対象に含まない |
| 第6回 Q72 | 医療法人は対象外(診療報酬の一文がなくなる) |
| 第7〜9回 Q73 | 医療法人は対象外。ただし歯科医業を営む医療法人は要件を満たせば申請可能 |
「保険診療で使う機器には使えない」と書いた解説は、第5回までの内容です。逆に、第6回以降の答えを根拠に「保険診療でも何でも対象」と読むのも行き過ぎです。審査は事業計画の中身で行われ、他の国の補助金と経費が重なれば対象外です。
対象者:個人開業と医療法人の入り方の違い
| 区分 | 原文の入り方 | 人数・資本金 | 補助率 | 提出書類の違い |
|---|---|---|---|---|
| 個人開業 | ア【中小企業者】「会社又は個人」 | サービス業 常勤従業員100人以下 | 5人以下は小規模事業者として2/3、6人以上は1/2 | 確定申告書の控え、納税証明書(その2)直近1年分、青色申告決算書または収支内訳書 |
| 歯科の医療法人 | キ【歯科医業を営む医療法人】 | 従業員300人以下 | 20人以下は2/3、21人以上は1/2(読み取り) | 履歴事項全部証明書、納税証明書(その2)直近3期分、法人事業概況説明書、役員名簿、株主・出資者名簿、診療所開設許可証・開設届 |
「資本金又は常勤従業員数が下表の数字以下となる会社又は個人」第9回 公募要領 PDF p.14(ア 中小企業者)
「特定非営利活動法人、社会福祉法人及び医療法人は、従業員が20人以下の場合、補助率が2/3になります。」第9回 公募要領 PDF p.15
「⑫ 歯科医業を営む医療法人の場合・診療所開設許可証・診療所開設届(副本もしくは写し)」第9回 公募要領 提出書類
読み取り: 個人の歯科医師について「対象です」と正面から答えた問いはありません。対象者の定義に除外がないこと、FAQ Q59 が個人事業主の申請を可能としていること、Q36 が「歯科医業を営む個人事業主」に触れていること、Q65 を合わせた整理です。
小規模事業者の補助率2/3には注意が要ります。採択の後、交付決定までに定義から外れると1/2に変更になります。交付決定の後も、補助事業の実施期間の終了までに外れると計画変更で1/2になり、確定検査で労働者名簿を確認すると要領にあります。スタッフを増やす予定のある5人前後の医院は、増員の時期と補助事業の期間を合わせて考えてください。
医療法人の「キ」には、社会福祉法人の「収益事業の範囲内」のような事業の範囲の条件は書かれていません。必要なのは都道府県知事の認可を受けて設立された法人であることと、従業員数の2点です。
補助上限と補助率:歯科の人数の行
補助上限は従業員数で決まります。歯科の診療所が関係するのは主に上の3行です。カッコは大幅賃上げの特例を使った場合の上限です。
| 従業員数 | 補助上限 | 特例時 | 上限引き上げ額 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 250万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | 500万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | 1,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | 1,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 2,000万円 |
出典: 第9回 公募要領 PDF p.8〜9。
| 補助対象者 | 補助率 | 特例 |
|---|---|---|
| 中小企業(個人6人以上を含む) | 1/2 | 最低賃金引き上げの特例で2/3 |
| 小規模企業者・小規模事業者(個人5人以下) | 2/3 | 特例の引き上げなし |
| 歯科の医療法人 20人以下 | 2/3 | - |
| 歯科の医療法人 21人以上 | 1/2(読み取り) | 要領で確認 |
次の表は、補助率と上限から逆算した計算です。上限まで使うために必要な投資額の目安で、これだけの額を使う必要があるという意味ではありません。
| 区分 | 補助率 | 上限 | 上限に届く対象経費(税抜) |
|---|---|---|---|
| 個人5人以下 | 2/3 | 750万円 | 1,125万円 |
| 個人6〜20人 | 1/2 | 1,500万円 | 3,000万円 |
| 医療法人20人以下(6〜20人) | 2/3 | 1,500万円 | 2,250万円 |
大幅賃上げの特例は、基本要件に加えて1人当たり給与支給総額の年平均成長率を合計6.0%以上にすること、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にすることなどが条件です。常勤従業員がいない場合は使えません。未達だと上限引き上げ分の返還を求められます。最低賃金引き上げの特例は、2025年10月から2026年9月の間に、地域別最低賃金の近くで雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合に、中小企業の補助率が2/3になるものです。
自院で使えるかは、開設者の区分で変わります
3問で診断する基本要件:デジタル化・AI導入補助金と違い、賃上げは外れません
ここは制度の取り違えが起きやすい点です。デジタル化・AI導入補助金には保険医療機関を賃上げ要件の適用外とする条文がありますが、一般型の公募要領に「保険医療機関」の語はなく、歯科医院にも基本要件が同じようにかかります。
| 基本要件 | 内容 | 未達の場合 |
|---|---|---|
| 労働生産性 | 年平均成長率+4.0%以上の3〜5年の計画 | - |
| 1人当たり給与支給総額 | 年平均成長率+3.5%以上の目標を設定し、全従業員または従業員代表者・役員に表明 | 達成率に応じて返還。年平均成長率が0以下は全額 |
| 事業場内最低賃金 | 毎年、都道府県の最低賃金+30円以上 | 補助金額を事業計画年数で除した額を返還 |
| 一般事業主行動計画 | 従業員21名以上は「両立支援のひろば」に公表 | - |
出典: 第9回 公募要領 PDF p.9〜12。返還の免除の条件(付加価値額が増えず営業利益が赤字の場合や天災など)は要領をご確認ください。
このほかに、省力化指数を計算した計画、投資回収期間を根拠資料とともに提出すること、基準年度より付加価値額が増える計画、人手不足の解消に向けてオーダーメイド設備等を導入する計画が要件です。金融機関から資金を調達する予定なら、金融機関の確認書も要ります。
「応募申請時の直近決算年度から事業計画期間終了までの期間において 1 人当たり給与支給総額の算出対象となる従業員数が 0 名となる場合には、対象となる給与が存在しないことから本事業には応募できません」第9回 公募要領 PDF p.10
院長1人とご家族だけで運営している個人の医院は、この文に当たらないか先に確かめてください。FAQでは、個人事業主本人の所得は給与支給総額や人件費に含めないとしています。
計算式を歯科医院に当てはめる
| 指標 | 要領の計算式 | 歯科医院で注意する点(読み取り) |
|---|---|---|
| 付加価値額 | 営業利益+人件費+減価償却費 | 医療機器の減価償却費が大きい医院は高めに出る |
| 労働生産性 | 付加価値額÷労働者数(従業員+役員。個人は事業主と専従者を加える) | パートは要領の定義で数え方を確認 |
| 省力化指数 | (削減される業務の時間−導入後に発生する業務の時間)÷削減される業務の時間 | 受付・会計・滅菌など、どの業務の時間を何分減らすかを測る |
| 投資回収期間 | 投資額÷(削減工数×年間稼働日数×人件費単価+増加した付加価値額) | 診療日数と人件費単価を実数で入れる |
省力化指数と投資回収期間は審査の技術面で評価されます。歯科医院は日々の業務時間を測っていないことが多いので、申請を考えた時点で、受付・会計・器具の洗浄滅菌・在庫の発注などの時間を記録しておくと、計画の根拠にできます。
返還の計算:未達だといくら戻すのか
基本要件は努力目標ではありません。要領には未達のときの返還の計算式が書かれています。式に数字を入れた例を示します(数字は説明のための計算で、特定の医院の話ではありません)。
| 場面 | 要領の計算式 | 計算の例 | 返還額 |
|---|---|---|---|
| 1人当たり給与支給総額の目標が未達 | (補助金交付額−補助上限引き上げ額)×(1−達成率)。達成率=実績の年平均成長率÷目標の年平均成長率 | 補助金750万円、目標3.5%、実績2.8%で達成率0.8 | 150万円 |
| 同上で年平均成長率が0以下 | 全額 | 補助金750万円 | 750万円 |
| 事業場内最低賃金の要件が未達 | 補助金額を事業計画年数で除した額 | 補助金750万円、計画5年 | 150万円(未達の年ごと) |
| 大幅賃上げの特例の要件が未達 | 補助上限との差額分(引き上げ額) | 5人以下で引き上げ250万円 | 250万円 |
出典: 第9回 公募要領 PDF p.12。付加価値額が増加しておらず営業利益が赤字の場合や天災など、事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされています。条件の細部は要領でご確認ください。
目標の水準も数字にしておきます。年平均3.5%は、1人当たり年400万円の給与支給総額なら3年後に約443万円、5年計画なら5年後に約475万円です(400万円×1.035の累乗の計算)。診療報酬の改定の見通しや採用の予定と合わせて、続けられる水準か確かめてください。事業計画期間は補助事業を完了した事業年度の翌年度を1年目として3〜5年です。
移転・新築・分院で気をつける点
補助事業の実施場所を特定していることが必須です。移転や新築の計画と一緒に考えている医院は、次の原文に当たらないか確かめてください。
「交付申請時点で建設中の場合や土地(場所)のみを確保して建設予定である場合は対象外となります。」第9回 公募要領 PDF p.9
交付申請のときに、不動産登記事項証明書や賃貸借契約書などで場所を確認します。自院の所有地でなければ、交付申請までに所有権か使用権が申請者に移っている必要があります。
分院の開設と合わせる場合、省力化指数については「新規出店を行う場合では、新たな業務プロセスで潜在的・将来的に存在する人手の削減時間も組み込むことが可能」とされています。ただし申請は同一法人・事業者で公募回ごとに1申請で、同時に複数の申請はできません。本事業に応募申請・交付申請中の事業者や、交付決定を受けて補助金の支払いが完了していない事業者も次の申請ができないと、公式のスケジュールのページに注意書きがあります。
歯科医院の従業員の数え方
補助上限と補助率は常勤従業員の数で決まるので、歯科衛生士や助手のパート、歯科医師の勤務形態によって行が変わります。要領の対象者の節とFAQを読むと、次のように数えます。迷う場合は事務局に確認してください。
| 人 | 常勤従業員に数えるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間の定めのないスタッフ(歯科衛生士・助手・受付など) | 数える | 労働基準法第20条の解雇の予告を要する者 |
| アルバイト・契約社員 | 日々雇い入れ、2か月以内の期間の定め、季節的業務、試用期間中でなければ数える | FAQ Q17・Q18 |
| 医療法人の理事長・役員、代表者 | 数えない(「代表取締役や専従者等」は当てはまらない者として例示) | 公募要領 PDF p.14 |
| 個人事業主本人・専従者 | 数えない | 公募要領 PDF p.14 |
「代表取締役や専従者等の常勤従業員に当てはまらない者が含まれていることが判明した場合、採択取消等になることがあります。」第9回 公募要領 PDF p.14
パートのスタッフが多い医院は、人数の数え方で上限の行と補助率が変わります。常勤換算の扱いは計画の種類で違う場合があるので、数え方は申請前に労働者名簿で確かめてください。確定検査でも労働者名簿を確認すると要領にあります。
申請の支援を頼むときの注意
要領の冒頭には、補助金の申請を支援する業者についての注意が書かれています。歯科向けの営業でもよく聞く話なので、原文を確認しておく価値があります。不適切な例として、実際の費用とかい離した高額な成功報酬の請求、補助金申請代行を主たるサービスとする営業、金額や条件が不透明な契約、強引な働きかけ、虚偽の記載の教唆などが挙げられています。
「補助金申請代行を主たるサービスとして営業活動等を行う。」第9回 公募要領 PDF p.3(不適切な行為の例)
事業計画の作成を支援した者がいるのに申請画面に書かないと、虚偽の申請として不採択や返還の対象になります。また、応募時に計画の作成を支援した者への費用は、専門家経費の対象になりません。支援を頼む場合は、報酬の額と条件を書面で確かめ、申請画面に書くことを前提に進めてください。公的な窓口としては、全国47都道府県のよろず支援拠点内に置かれた生産性向上支援センターがあります。
一番の壁:汎用品の単体導入は対象外
歯科医院が一般型を考えるとき最初に当たる壁がこの条文です。市販の機器を1台買うだけの計画は対象になりません。
「汎用設備、パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業」第9回 公募要領 PDF p.13(補助対象外となる事業)
「汎用設備であっても、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合や、汎用設備を組み合わせて導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことが可能である場合には、オーダーメイド設備であるとみなし、本事業の対象となります。」第9回 公募要領 PDF p.11
「1つ以上、単価 50 万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要。」第9回 公募要領 PDF p.19
これを歯科で検討されやすい機器に当てはめると、次のようになります。右の列は当サイトの読み取りで、対象になることを示すものではありません。審査は事業計画の内容で行われます。
| 検討される機器 | 単体で買う場合 | 計画の組み立て方の考え方(読み取り) |
|---|---|---|
| 自動精算機 | 単体は対象外の条文に当たりうる | 予約・受付・レセコンとの連携や、受付から会計までの業務の時間の削減を一体で説明できるか |
| 滅菌器・洗浄機 | 同上 | 洗浄から滅菌、器具の管理までの工程を組み合わせて削減時間を示せるか |
| 歯科ユニット | 同上。診療そのものの機器で省力化の説明が難しい | 省力化指数を計算できる業務があるか |
| 歯科用CT・口腔内スキャナー | 同上 | 印象採得や模型の作業の時間の削減を、周辺のソフトと合わせて説明できるか |
| 電子カルテ・予約ソフトのみ | パッケージソフトの単体は対象外。機械装置等の要件も満たさない | ソフトだけならデジタル化・AI導入補助金が候補 |
製品カタログに登録されているカテゴリの製品を入れる場合は審査で一部考慮するとされていますが、カタログの製品をそのまま入れるだけの計画は一般型の対象になりません。周辺機器や機能が環境に応じて変わる場合や、複数を組み合わせる場合に限られます。
「製品カタログに掲載されている製品をそのまま導入するのではなく、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合や、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合に限って、本事業の対象となることに留意してください。」第9回 公募要領 PDF p.3
補助の対象になる経費とならない経費
| 経費 | 区分 | 上限 | 歯科で見る点 |
|---|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 必須 | 単価50万円(税抜)以上を1つ以上 | 借用(リース・レンタル)は50万円の条件に含まれない |
| 運搬費 | 任意 | - | 機械装置の運搬料は機械装置費に含める |
| 技術導入費 | 任意 | 対象経費総額の1/3 | - |
| 知的財産権等関連経費 | 任意 | 対象経費総額の1/3 | - |
| 外注費 | 任意 | 対象経費総額の1/2 | 設計の一部の外注。外注先が設備を買う費用は対象外 |
| 専門家経費 | 任意 | 対象経費総額の1/2。1日5万円が上限 | 計画の作成を支援した者は対象外 |
| クラウドサービス利用費 | 任意 | 要領で確認 | 月額・年額の利用料はこちらで判断 |
出典: 第9回 公募要領 PDF p.19〜21。
対象外の経費で歯科に関係しそうなものを抜き出すと次のとおりです。
- 交付決定の前に発生した経費。いかなる理由でも事前着手は認められません。
- 既に導入されているシステムやソフトのバージョンアップ・改修。ただし新規に導入するシステムと連携するための改修は対象です。
- 不動産の取得、建物と一体不可分の附属設備、設置場所の整備工事や基礎工事。配管の工事が大きい機器は、どこまでが据付けかを確かめてください。
- 事務所の家賃、通信費、消耗品代、団体の会費。
- 自動車等の車両。訪問歯科の車は対象外です。
- 税理士などへの税務申告の費用。
「交付決定前に発生した経費 ※いかなる理由であっても事前着手は認められません。」第9回 公募要領 PDF p.21
見積書を取ること自体も、事前着手に当たらないよう注意するよう要領にあります。機器の発注を急いでいる場合、この補助金とは時期が合わないことがあります。リースを使う場合は、対象リース会社と共同で申請する仕組みが別にあります。
計画の材料になる業務時間の測り方
省力化指数と投資回収期間は、どの業務の時間がどれだけ減るかが出発点です。要領は測り方を指定していませんが、歯科医院なら次のような業務を分けて記録すると計画に書きやすくなります。数字は自院で測ったものだけを使い、資料の根拠として残します。
| 業務 | 測るもの | 導入後に発生する時間として見込むもの |
|---|---|---|
| 受付・会計 | 1人あたりの受付と会計の時間、1日の件数、担当者の人件費単価 | 機器の管理、問い合わせへの対応 |
| 器具の洗浄・滅菌 | 1回あたりの作業時間、1日の回数 | 機器の準備、点検、記録 |
| 在庫の確認・発注 | 週あたりの棚卸と発注の時間 | データの確認 |
| カルテ・文書の作成 | 1日の入力や文書作成の時間 | 操作の習熟の時間 |
システム構築費を計上する場合、FAQ Q66は事業計画期間内の保守・メンテナンスを約した契約の内容を確定検査で確認するとしています。機器の保守費用も含めて投資回収期間を考えてください。自己資金で足りず金融機関から借り入れる予定なら、金融機関による事業計画の確認書も提出します。金融機関は事業場の所在地域にある必要はなく、任意の機関を選べます。導入する機械装置等を担保に借りる場合は、中小機構への事前の申請が要ります。補助金は後から入るので、支払いの時期の資金も合わせて確認してください。
審査の観点と加点の項目
審査は適格性、技術面、計画面などの観点で行われます。技術面は省力化指数、投資回収期間、付加価値額、オーダーメイド設備の4つです。計画面では社内外の体制や財務状況、セキュリティ対策の状況、賃上げの目標などが見られます。補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価の対象で、物価上昇率を上回らない計画は審査で大幅に不利になると書かれています。
| 加点の項目 | 内容 | 歯科医院との関係(読み取り) |
|---|---|---|
| 事業承継又はM&Aを実施した事業者 | 過去3年以内に事業承継で経営資源を引き継いだ事業者 | 株式譲渡又は相続・贈与により法人と個人間で承継した場合、同一法人内の代表者交代に限る。当たるかを要領で確認 |
| 事業継続力強化計画 | 有効な期間の認定を取得 | 事前に認定を取る必要がある |
| 成長加速マッチングサービス | 会員登録し挑戦課題を登録 | - |
| 地域別最低賃金・事業場内最低賃金 | 要件の期間の賃金の状況 | 賃金台帳で確認 |
| えるぼし・くるみん | 認定を受けている | - |
| 省力化ナビ | 中小機構のサイトを活用 | GビズIDプライムの入力が要る |
| 健康経営優良法人2026 | 認定されている | - |
| 生産性向上支援センターの利用 | 生産性向上取組計画書の作成が完了し提出 | 全国47都道府県のよろず支援拠点内に2026年4月1日に設置された公的支援機関 |
出典: 第9回 公募要領 PDF p.31〜32。
医療業であることや歯科であることを評価する項目はありません。「歯科は採択されやすい」という説明に根拠は見当たりません。計画の作成を支援した者がいる場合は、申請画面に名前と報酬を記入する決まりで、記入しないと虚偽の申請として扱われます。補助金の申請代行を主なサービスとする営業などは要領が不適切な例に挙げています。
申請の流れと書類、第9回の日程
| 公募回 | 公募開始 | 申請受付開始 | 締切 | 採択発表 |
|---|---|---|---|---|
| 第7回 | 2026年6月5日 | 2026年7月1日 | 2026年7月31日17:00 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年8月18日 | 2026年9月18日 | 2026年10月16日17:00 | 2027年2月上旬(予定) |
| 第9回 | 2026年11月4日 | 2026年12月上旬(予定) | 2026年12月下旬(予定) | 2027年3月下旬(調整中) |
出典: 一般型 公式スケジュール(2026年11月5日確認)。公募回は年3〜4回を予定とされ、第10回は未定です。
第9回で申請する場合、公募の開始から締切までおよそ2か月です。GビズIDプライムの取得には一定の期間が要るので、先に済ませます。事業実施期間は交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)です。補助金の交付額の確定のときに現地調査があり、設備や証憑を確認できない場合、その金額は対象になりません。
| 書類 | 全事業者 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|---|
| 決算 | 損益計算書・貸借対照表 直近2期分 | 青色申告決算書または収支内訳書を含む | 製造原価報告書、販売費及び一般管理費明細、個別注記表を含む |
| 税 | - | 確定申告書の控え(第一表)、納税証明書(その2)直近1年分 | 納税証明書(その2)直近3期分、法人事業概況説明書 |
| 計画 | 事業計画書(その1〜その3) | 同左 | 同左 |
| 機器 | 導入予定の機械装置等の仕様・積算根拠が分かる書類 | 同左 | 同左 |
| 法人の証明 | - | - | 履歴事項全部証明書、役員名簿、株主・出資者名簿(歯科の医療法人は診療所開設許可証・開設届も) |
開業したばかりの医院は、この段階で止まることがあります。FAQ Q149は、直近1期分以上の決算を迎えていない場合は申請できないと答えています。
「直近1期分以上の決算を迎えていない場合は申請できませんのでご注意ください。」FAQ Q149(共通)FAQ PDF p.10
申請の後に医療法人になる場合
個人で応募した後に医療法人にする場合、一般の個人事業主なら補助事業の終了前に医療法人になると補助金は支払われず、終了後は財産処分の扱いで一部の返還が要ります。歯科は例外があり、要件を満たす歯科の医療法人になる場合はその限りではないとFAQに書かれています。ただし事前の承認が要ります。
「歯科医業を営む個人事業主が、以下の要件を全て満たす歯科医業を営む医療法人となった場合はその限りではございません。」FAQ Q36(第7〜9回)FAQ PDF p.3
「法人化を予定している場合は、事前に独立行政法人 中小企業基盤整備機構の承認を得る必要があり、事案毎に判断させていただきます」FAQ Q36(第7〜9回)FAQ PDF p.3
カタログ注文型とは別の制度です
同じ省力化投資補助金でも、カタログ注文型と一般型は対象者の結論が違います。カタログ注文型の製品に自動精算機があるから歯科でも買える、という説明は原文と合いません。
| 項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 歯科の医療法人 | 対象(第7回から) | 対象外 |
| 個人の歯科医師 | 対象と読める | 形式上は対象だが実質使えない |
| 対象の決まり方 | 事業計画の審査 | 製品に紐付けられた業種と事業者の業種の合致 |
| 診療報酬 | 重複に該当しない(Q65) | 補助対象経費が重複するものは対象外 |
| 医療業の扱い | - | 業種・業務領域対応表に行がない |
「導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合致すること」カタログ注文型 応募・交付申請の手引き PDF p.28
自動精算機の記事で、業種の表を実際に開いた結果を説明しています。
他の解説を読むときに見比べるところ
「歯科 省力化補助金」で出てくる解説は、公開した時期によって前提が違います。次の3点を見ると、いつの版を読んだ記事かが分かります。
| 見るところ | 第9回の原文 | 食い違いの例 |
|---|---|---|
| 個人開業はいつから使えるのか | 対象者の定義は第2回から「会社又は個人」で、保険診療の扱いが第6回でQ65に変わった | 「第6回から個人開業が新しく対象」という説明は、対象者の定義が変わったのか、FAQの答えが変わったのかを分けて読む |
| 医療法人の補助率 | 「従業員が20人以下の場合、補助率が2/3」 | 医療法人を一律に1/2や2/3と書いたもの |
| 補助上限 | 5人以下750万円(1,000万円)〜101人以上8,000万円(1億円) | 「最大1億円」だけ書いたもの。自院の人数の行で読む |
題名の数字に引かれず、自院の人数の行で考えてください。歯科診療所の従業者の分布はこの記事では扱いませんが、上限の「1億円」は101人以上で大幅賃上げの特例を使う場合の数字です。5人以下の医院なら上限は750万円で、特例を使っても1,000万円です。
更新日と公募回が書かれていない解説は、どの版の話かを確かめてから読んでください。第何回の話かが分かれば、この記事の冒頭にある版の表と照らせます。第5回以前の話なら保険診療の答えが今と違います。
まだ分からないこと
歯科の医療法人が初めて入った第7回の採択発表は2026年11月中旬の予定で、この記事の時点では公表されていません。歯科の医療法人がどれだけ採択されたか、どの設備の計画が通ったかは、発表の後でなければ分かりません。「歯科医院の採択実績が多い」といった説明は、少なくとも歯科の医療法人については現時点で根拠がありません。発表があり次第、公表された一覧で確かめてこの記事を更新します。
個人の歯科医師が第6回までにどれだけ採択されたかも、採択者の一覧では歯科医師かどうかをはっきり判別できないので、この記事では数えていません。
申請を考えるときの順番
- 開設者の区分と常勤従業員数を確かめる(個人と医療法人の違い)。
- 決算の期数を確かめる。直近1期分の決算を迎えていなければ申請できません。
- 削減したい業務の時間を2〜4週間ほど測り、省力化指数と投資回収期間の材料にする。
- 単価50万円以上の機械装置等を含み、単体の汎用品の導入にならない構成かを販売元と確かめる。
- 賃上げと最低賃金の計画を、返還の条件まで読んで立てられるか判断する。
- GビズIDプライムを取り、第9回の申請受付の開始(12月上旬の予定)に備える。